三日月句会

俳句のこと。句会のこと。一考さんのこと。

2019-01-01から1年間の記事一覧

一句を究める

突然・・・でもないのだが、 「人」誌の終刊と結社の解散が決まった。 何とか続けてほしくて、新しい連載を始めたりした。 何の役にも立たなかった。 最終号まで続けようと思っている。 令和二年の一月号が届いた。 カウントダウン的な風情をはらんでいてやるせ…

葉鶏頭

微笑ましい原稿が出て来たので載せておく。 葉鶏頭絶句を絶句たらしめむ 歌澄 真赤な句を作りたかった。 偶々訪れた発行所で、備品の封筒の宛名書を見たある人が、「あら、これ○○さんの字だわ」と呟いた。筆跡の主は、俳人としての将来を嘱望されながら五十…

夜寒

しやらくせいと夜寒の声すシャンデリヤ 『斧のごとく』より。昭和53年。 「人」創刊前夜の句。 普段「しやらくせい」などという台詞はなかなか聞かれない。 発するのにも力が要る。近松や黙阿弥あたりの世話狂言の一場面なども彷彿とする。 語尾からすると江…

新米

新米に梅干一つ乗せてみる 『黄檗山』より。昭和57年。 新米の季節になるといつも思い出す。 そして実際にやってみる。 私の中で、新米の儀式のようになっている。 この句を鳥居おさむが魅力的に鑑賞している。 新米を炊く。 真白で、艶があって、しかも粒が…

その一辺の秋の風

五稜郭その一辺の秋の風 『貌鳥』より。平成二年十月。 五稜郭は日本初の西洋式の城郭で、いわゆる星形の堡塁が特徴的である。 平成二年十月、函館で「人」全国大会が開催された。残念ながら私は当時大学生で、地元での大会に参加することはできなかったが、…

真青な猫じやらし立つ盆の来て 『斧のごとく』より。昭和52年。 今年のお盆も過ぎた。 祖先の霊を迎える行事である。 地方によっては7月に行われる場合もあるが、歳時記では秋季とされていて、お盆が過ぎると何となく季節が進んだような気分になるというの…

立秋

珈琲に王偏ふたつ秋立ちぬ 句集『白昼』より。平成4年作。 作者はコーヒー好き。 吟行先で姿が見えなくなって探すと、喫茶店の席についてコーヒーを待っているということもあった。 コーヒーの漢字表記「珈琲」は江戸期の蘭学者宇田川榕菴によって考案された…

八月一日

ブログ引っ越しました。 追々慣れていきます。 さて、 八月一日は一考さんの誕生日。 扉をひらき八月一日ありにけり(H.8) 一枚の裸なりけり誕生日(S.63) 誕生日を意識していたらしく、各句集の後書は大抵八月一日に書かれている。 そういえば、一考さん…

さくらんぼ

東京例会で一考さんが「さくらんぼ」を詠む難しさを語ったことがあった。 さくらんぼは一粒というよりたくさんの印象があり、どうしても雰囲気を詠んだものになってしまう。他を見回しても具体的に描写した句は少ない。 その時自作の例として挙げたのは、 さ…

紅梅

紅梅に最もちかき船櫓 『斧のごとく』より。昭和53年 作者の詠む紅梅は、よく水辺にある。 洲になにもなし紅梅の一進す 洲を掘りて水位の確か薄紅梅 昂然と紅梅あらば渚まで 作者の居住地横須賀方面の風景のようにも思う。怠慢ゆえにまだ確かめていない。 海…

身に湧いて雛のうたや小名木川 『白昼』より。平成四年。 「小名木川」「雛」といえば『おくのほそ道』である。 江戸深川の「江上の破屋」に暮していた芭蕉が漂泊の思い止まずに松島を指して旅立つ冒頭部分、人手に渡った庵に 草の戸も住替る代ぞひなの家 と…

かいつぶり

乱読に当てなかりけりかいつぶり 『貌鳥』より。平成元年。 「乱読」とはそもそも手当たり次第に読むことなので、この句の「当てなかりけり」は念を押しているようなもの。「わざわざ云わなくても」と思ったものだった。 今日突然、この句がしっくり来た。 …

大寒

大寒や灯して濁す身のほとり 『斧のごとく』より。昭和52年。 手元の灯かと思う。 何かの必要に迫られて灯したが、そこに照らし出されるのは必ずしも美しい世界ではない。 見なくてもよいものまでが浮かび上がってくる。そして、それは避けられない事象なの…