三日月句会

俳句のこと。句会のこと。一考さんのこと。

進藤一考

ユダ

ユダ読むで金貨の如き夜光虫 一考 昭和50年作。『河』掲載。 ユダといえば「銀貨30枚でイエスを敵に売った」と広辞苑で身も蓋もないいわれ方をしている裏切り者の代名詞のような存在。Giotto の「ユダの接吻」も思い出される。 「ユダ読むで」から連想したのは太宰…

一句を究める

突然・・・でもないのだが、 「人」誌の終刊と結社の解散が決まった。 何とか続けてほしくて、新しい連載を始めたりした。 何の役にも立たなかった。 最終号まで続けようと思っている。 令和二年の一月号が届いた。 カウントダウン的な風情をはらんでいてやるせ…

菊冷えと思ひをりしが紅葉冷え

菊冷えと思ひをりしが紅葉冷え 一考 私事だが、11月の函館句会に「菊日和」の句を出したら無点だった。 「季感がピンと来なかった」という。 東京では菊花展も開催され、晩秋から初冬の、本当に良い季節。 函館では雪も降りはじめ、最低気温は氷点下になる。…

白梅や睡魔が神の姿して

白梅や睡魔が神の姿して 進藤一考 句集『櫂歌』より。昭和59年。 白梅を見ていたら眠くなってきた。睡魔に襲われたのだ。 白梅の樹は満開で遠目に雲のように見える。それが曇っていると梅の花と空とが混然一体となって自分もその中に溶け込んでしまいそうに…

「冬鷗」

湧きに湧く埠頭の鷗破魔矢享く 一考 句集『白昼』より。平成三年の作。 初詣の景。作者は横須賀に住んでいたから、海の感じられる句が多い。 埠頭に鷗が「湧きに湧」いている。漁港のようにも思える。きっと天気も良く、新年の青空を飛び交う鷗の翼が日に輝…

仁左衛門洛中にあり燗熱く

仁左衛門洛中にあり燗熱く 一考 句集『白昼』より。 京都南座で「まねき上げ」が行われたというニュースを見ていて、この句を思い出した。 http://www.kabuki-bito.jp/news/2967 12月には南座で「吉例顔見世」が始まり、ここから歌舞伎の一年が始まる。大切…

冬芒

冬芒未曾有の光流れけり 一考 作者はそこに異界を見ている。 穂の開ききった冬の芒はより光を通し風を容れ、一斉に靡く様には近寄りがたい荘厳さがある。 「未曾有の」という表現には、そんな冬芒が光と一体化し、大きな光芒として現前しているのを目の当た…

青き柚子

青き柚子鞄に入れて夜行性 一考 「貰った柚子は真青であった。鞄に入れても発光するような色だった。習慣となってしまった夜型の生活を助長するようだった。」(『自註現代俳句シリーズ・Ⅱ期 20 進藤一考』より) 昭和55年の作。 初めて読んだとき、「青き柚…

「人」創刊の辞

今から36年前、進藤一考49歳の創刊の辞。 何よりも結社内の人間がこの理念を見直し、噛みしめねばならない現状である。 「人」創刊の辞 我々は、あらたに「人」を創刊することとなった。俳誌の名を「人」と決定したのは、”俳句は人なり”の信条に従った。古代…