三日月句会

俳句のこと。句会のこと。一考さんのこと。

「冬鷗」

湧きに湧く埠頭の鷗破魔矢享く  一考

句集『白昼』より。平成三年の作。

 初詣の景。作者は横須賀に住んでいたから、海の感じられる句が多い。
埠頭に鷗が「湧きに湧」いている。漁港のようにも思える。きっと天気も良く、新年の青空を飛び交う鷗の翼が日に輝いて、光が乱れ飛ぶような風景。作者の心も晴れ晴れとしているのだろう。
 そのめでたい空間の「徴(しるし)」とも見えるような破魔矢を享け、満足して目を細めて歩いている作者の姿が思い浮かぶ。

 この人の、この土地ならではの句を追体験したくて私も横須賀に住んだ。入居予定のマンションの完成を待っている間に一考さんは亡くなってしまったが、街の空気を感じることが出来たのは大きかった。
 そういえば、まだこの海辺の神社へは行ったことがない。久里浜の方だと思うのだが。
 いつか晴れた日に訪れてみよう。