啓蟄
「瓦職」が踏みしめているのはやはり瓦屋根だろう。足は地下足袋だろうか。
作者の家が瓦葺だったかどうかは知らないが、実際の景を見ているというよりは、作者は家の中に居て、職人が屋根の上を移動する音を聞いているような印象がある。
神経を使いながらの作業が生み出す音から瓦の照りや熱が伝わってくる。
「踏みしめて」という行為はまた、地を固める、地下のものを呼び覚ますことを連想させる。折しも今日は啓蟄。明るく穏やかな空の下、屋根普請の情景を通じて生命が活き活きと動きだす気配を感じ取った作者である。
もし作者が家の中にいるとすれば、自分が土中の蛙や虫のような気分になっていたのかもしれない。
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このブログで何をしたらいいのか、サボりながらも悩んでいましたが、やはり進藤一考と「人」の俳句を紹介することに意を置きたいと、改めて思いました。