2016-02-08 主宰作品鑑賞 1月号より 「人」誌面 #俳句、川柳 1月は自分が風邪をひいたり父の緊急入院に伴って帰省したりと、あっという間に過ぎ去り、 こちらも随分お留守になってしまいました。 また鋭意更新に努めますので、よろしくお願いいたします。 遅ればせながら、1月号の主宰作品から。 殊によきピアニッシモよ月の椅子 麻績 「ピアニッシモ」は音楽用語でPPと表記され、「極めて弱く」の意。ただ弱ければ良いというものではなく、音程を保ったまま響きを残さなければならないため、声楽でも器楽でも高度な技術を要する。「殊によきピアニッシモ」からは演奏者の技量と聴衆が集中して聴き入っている様子が覗える。それを承けるのが「月の椅子」。ピアニッシモと月光が一体となって佳きひと時の充足感が伝わってくる。 音楽や美術を詠んだ句は、それら自体に情緒があるために句として甘くなりがちだが、掲句は「ピアニッシモ」と「月の椅子」が引き合って、緊張感を描き出すことに成功している。(鑑賞・川越歌澄)