2019-03-02 雛 一考歳時記 #俳句、川柳 身に湧いて雛のうたや小名木川 『白昼』より。平成四年。 「小名木川」「雛」といえば『おくのほそ道』である。 江戸深川の「江上の破屋」に暮していた芭蕉が漂泊の思い止まずに松島を指して旅立つ冒頭部分、人手に渡った庵に 草の戸も住替る代ぞひなの家 と詠み残す。 作者は偶々桃の節句の頃に小名木川あたりを歩いている。 そういえば芭蕉が「ほそ道」の旅へ出立したのは今頃だった。 知らず知らずのうちに「雛のうた」が口をついて出る。 暖かくて穏やかな陽春の日が思われて微笑ましい。 「小名木川」も効いている。江戸初期にはすでに人の暮らしを支えていた運河の、真直ぐな光。現在では隅田川への合流点には芭蕉像が設置され、ふたつの流れを見守っている。 写真は雛の頃より少し前、雪の日の芭蕉さん。