葉鶏頭
微笑ましい原稿が出て来たので載せておく。
葉鶏頭絶句を絶句たらしめむ 歌澄
真赤な句を作りたかった。
偶々訪れた発行所で、備品の封筒の宛名書を見たある人が、「あら、これ○○さんの字だわ」と呟いた。筆跡の主は、俳人としての将来を嘱望されながら五十代の若さで亡くなった人だった。
その呟きが何となく耳に残ったままバスに乗っていて、突然大きな葉鶏頭が視界に飛込んできた。実際の風景だったのかは定かでない。不意討のように掲句が形になった。「絶句」ということを考えていて、そこに現れたのが「葉鶏頭」だったということかと、今になって思う。
この句が出来たのは平成四年。恐る恐る出句した(私ごときが出句してもよいのかと電話で問合せた)東京例会で一考主宰の特選を頂いた。応えてもらったのが嬉しかったし、こういう句を作ってもよいのだという自信にもなった。いろいろな意味で契機になった句。
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句を作ったのは大学生の時。文章を書いたのは8年前。
現在とも時間の隔たりを感じるね。
当時の東京例会の緊張感まで思い出した。