噴水
本降りに夜の噴水の有頂天
句集『貌鳥』より。平成元年の作。
「有頂天なものって何だろう」と作者はイメージを膨らませる。
「胡蝶蘭」を連想する。それでは容易に想像がついてつまらない。
続いて「噴水」を思う。「夜の噴水」がイメージに合う。
しかしそれに輝きを与える上五が決まらない。
気にしつつ、作者はデパートへ行く(案に詰まると駅かデパートへ出掛ける人だった)。
買い物をして財布を取り出したときに、誤って小銭をぶちまけてしまう。
その瞬間に浮かんだのが、「本降り」だったという。
一考さんが存命の頃の東京例会は、私のような一般会員(当時)がおいそれとは参加できない雰囲気で、つい足が遠のいていたのだが、一考さんの講評と自句自解は本当に面白く、いまでも強く印象に残っている。
もっともっと話を聞いておけばよかった。
今日の東京は午後から雨が降りだし、夕方にはかなり強い雨。
予報で云っていた「本降り」を侮って出掛け、折り畳み傘がかなりなぶられた。
噴水の高笑いが聞こえたような気がした。