猫と市電
三月や猫と市電が海へゆく
句集『斧のごとく』より。昭和55年作。
函館を詠んだ句だと勝手に思っていたが(我田引水的に)、
富山は高岡の情景とのこと。
広辞苑によると「市電」は「市営電車または市外電車の略。通常、路面電車を指す」とあり、「主に市街の一般道路上の軌道を運行する電車(これも広辞苑より)」を思い浮かべればよい。
(ちなみに函館では、市内を走る路面電車を「電車」、JRなどの長距離列車を今でも「汽車」と呼ぶ)
軌道の上をガラガラと音をさせて走る市電、さほど速くなく、のんびりした雰囲気が漂う。さらに「猫と市電」とあると、並んで歩いているような趣で、もちろん猫は心の赴くままに我が道を行っているだけだが、たまたま向きを揃えて作者の前を通っていったようである。まっすぐ行くとその先は海。
きっと天気も良く寒くもなく、広がる海のきらめきが思われるような日なのだろう。
街全体の明るさも感じられる。
「三月」でなければ決まらない句のように思える。
高岡へはまだ行ったことがないが、調べてみたら「万葉線」という路線らしい。
この句が作られた頃はこの名称ではなかったようだが、旅情を誘う名前である。高岡ー新湊間を走っている。「海」は日本海か。
春先の日本海を見に、一度訪れてみたい。