フレデリック
このところ、
しきりに「フレデリック」が思い出される。
冬に備えてせっせと食べ物を集めるねずみたちの中で、フレデリックだけがじっと佇んで、何もしていないように見える。
仲間が咎めると、フレデリックは「ボクは働いてるよ。ちゃんと集めてる」という。
彼が集めていたのは「太陽の光」「色」「ことば」。
長い冬、巣穴に蓄えた食料が乏しくなり、話すこともなくなると、ねずみたちはフレデリックの「仕事」を思い出す。フレデリックは皆に眼を閉じさせると、自分が集めた光や色やことばを心の中に思い描かせる。みんな幸せになり、フレデリックを称賛する・・・
思うように外出もできず、不安もつのる今、
こんな風に、集めておいた光や色やことばを取り出して共有すれば、救われることもあるかもしれない。
もちろんフレデリックの表現力は非凡だし、また一見働いていなように思えたフレデリックをちゃんと受け入れ、且つ彼のことばを理解して思い描くことの出来る仲間たちもただ者ではない。「お腹がふくれない」とか云って怒る者もいないのはすごい。
でも、ニンゲンにもきっとこうした想像力はあるし、俳句を作っている者としては、これまで「集めて」きた光や色を、せめて自分の中で再現する努力はしたいと思う。