三日月句会

俳句のこと。句会のこと。一考さんのこと。

主宰作品鑑賞 11月号より

この号から主宰作品鑑賞を担当することになりました。
鑑賞文が掲載されるのは来年1月号からですが、
11月号のご紹介に合せて一部掲載してみます。
(いつも漢数字とアラビア数字の使い方に悩む…)

喪服着て木槿の道を通りけり   麻績

「道のべの木槿は馬にくはれけり」という芭蕉の句を、俳句に多少なりとも関わる者ならば思い出すのではないだろうか。「馬上吟」とある。道すがらの木槿の花に目を留めていたら、乗っていた馬が花を食べてしまった、というところだろうか。この句は『野ざらし紀行』に収められており、全体を一貫して流れる、生命・存在の儚さの気分を承けているものである。
 今年は関東地方で木槿の花の咲くのが早かったように思う。葬儀へ向かう途中、或いは葬儀からの帰途、木槿の花を目にする。夏の終りから秋の初めにかけて、時の移り変りをはっきりと気づかせてくれる花ではないだろうか。曾て見た道沿いの満開の辛夷の花を私が忘れることが出来ないのと同じように、作者が亡くなられた方への思いを抱きながらの道のりであればこその景だと思う。
 余談だが、先日韓国へ行った際に、当地では木槿を「無窮花(ムグンファ)」と呼ぶことを知った。この植物の逞しさ、粘り強さに着目してのことらしい。そうした生命感を感じつつ歩いている景としても、背後には人の世の儚さが見えるのではないだろうか。